【第54回 気象予報士試験 専門知識】問10 温帯低気圧の発達と閉塞をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第54回 気象予報士試験 専門知識 問10を解説します!

この問題は、北半球の偏西風帯における温帯低気圧の発達・熱輸送・バルジ・上層トラフとの関係について問う問題です。

受験生がつまずきやすいのは、「温帯低気圧化=必ず弱まる」と思ってしまうところです。

台風から変わった温帯低気圧でも、上空のトラフや前線活動の影響を受けて、再発達することがあります。

この問題で重要なポイント

  • 台風から温帯低気圧に変わっても、中心気圧がさらに低くなることがある。
  • 発達中の温帯低気圧では、東側で暖気が北上する。
  • 発達中の温帯低気圧では、西側で寒気が南下する。
  • その結果、熱は北向きに輸送される。
  • 赤外画像では、発達期に雲域の北縁が寒気側へふくらむことがある。
  • この雲域のふくらみをバルジという。
  • 発達期には、地上低気圧中心と上層トラフを結ぶ軸は上層ほど西に傾く。
  • 閉塞過程に入ると、この軸は次第に直立する。

■ 問題文

北半球の偏西風帯における温帯低気圧について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a) 台風から変わった温帯低気圧では、温帯低気圧になった時点から中心気圧が低くなることはない。

(b) 発達中の低気圧では、低気圧の東側で暖気が北上し、西側で寒気が南下するため、熱は北向きに輸送される。

(c) 気象衛星の赤外画像でみると、低気圧の発達期には、地上低気圧中心の東側の雲域は、その北縁が寒気側にふくらむ。

(d) 地上低気圧の中心と上層のトラフを結ぶ軸が上層ほど西に傾いていると低気圧は発達するが、閉塞過程に入るとこの軸は次第に直立するようになる。

選択肢 内容
(a)のみ誤り
(b)のみ誤り
(c)のみ誤り
(d)のみ誤り
すべて正しい

■ 解答

(a) 誤
(b) 正
(c) 正
(d) 正

■ 解き方の方針

この問題は、温帯低気圧の発達を次の流れで押さえると解きやすいです。

発達中の温帯低気圧

東側で暖気が北上
西側で寒気が南下

熱を北向きに輸送

地上低気圧

上層トラフ

軸が西に傾く

発達しやすい

一方で、「温帯低気圧化したら必ず弱まる」という考えは誤りです。

■ 補足講義:温帯低気圧は何で発達する?

温帯低気圧は、台風とは発達の仕組みが違います。

台風は主に暖かい海面から供給される水蒸気の潜熱で発達します。

一方、温帯低気圧は、主に暖気と寒気の温度差をエネルギー源として発達します。

項目 台風 温帯低気圧
主な発達場所 暖かい海上 中緯度の偏西風帯
主なエネルギー 水蒸気の潜熱 暖気と寒気の温度差
構造 暖気核・軸対称 前線を伴うことが多い
発達の見方 中心付近の対流 上層トラフ・温度移流・前線活動

ここで止まりやすいポイント

台風が温帯低気圧に変わると「台風としては弱まった」と感じます。

しかし、温帯低気圧として別の仕組みで発達することがあります。

■ (a) 温帯低気圧化した後は中心気圧が低くならない?

(a)は誤りです。

台風から変わった温帯低気圧でも、温帯低気圧になった後に中心気圧がさらに低くなることがあります。

つまり、温帯低気圧化は必ず弱体化を意味するわけではありません。

台風

温帯低気圧化

必ず弱まる?

答え

必ずではない

再発達することがある

温帯低気圧になった後、上層トラフや前線活動の影響を受けると、中心気圧が下がって再発達する場合があります。

ここが最大のひっかけ

「台風ではなくなった=弱くなった」と短絡的に判断すると間違えます。

温帯低気圧化は、性質が変わることであって、必ず中心気圧が上がることではありません。

したがって、(a)は誤りです。

■ (b) 発達中の低気圧では熱が北向きに輸送される?

(b)は正しいです。

北半球の発達中の温帯低気圧では、低気圧の東側で南から暖気が北上し、西側で北から寒気が南下します。

低気圧の東側

暖気が北上

低気圧の西側

寒気が南下

結果

熱は北向きに輸送される

これは、中緯度で南北の温度差を解消しようとする大気の働きでもあります。

熱輸送の覚え方

暖気が北へ運ばれるので、熱は北向きに輸送されます。

「寒気が南下する」ことも、南北の温度差を小さくする働きです。

したがって、(b)は正しいです。

■ 補足講義:熱輸送を流れで理解する

温帯低気圧の発達では、熱輸送が重要です。

南側の暖気

低気圧の東側を北上

北へ熱が運ばれる

北側の寒気

低気圧の西側を南下

南北の温度差を緩和

ここでいう「熱は北向きに輸送される」は、暖かい空気が北へ運ばれることをイメージすれば大丈夫です。

■ (c) 発達期の雲域は北縁が寒気側にふくらむ?

(c)は正しいです。

気象衛星の赤外画像で温帯低気圧を見ると、発達期には地上低気圧中心の東側の雲域が発達し、その北縁が寒気側へふくらむことがあります。

このような雲域のふくらみをバルジといいます。

温帯低気圧の発達期

低気圧東側の雲域が発達

北縁が寒気側へふくらむ

バルジ

ここで間違えやすい理由

「寒気側にふくらむ」という表現がイメージしづらいですが、衛星画像では発達中の低気圧の雲域が北側へ盛り上がるように見えることがあります。

したがって、(c)は正しいです。

■ 補足講義:バルジとは

バルジとは、温帯低気圧の発達期に見られる雲域のふくらみです。

上昇流が強まり、雲域が寒気側へ拡大していくことで、赤外画像上では雲域の北縁がふくらんで見えます。

用語 意味 試験での見方
バルジ 発達期の雲域のふくらみ 温帯低気圧の発達を示すサイン
赤外画像 雲頂温度を見る画像 白い雲域ほど雲頂が高い
寒気側へのふくらみ 雲域が北側へ拡大 上昇流・発達と関係

■ (d) 軸が西に傾くと発達し、閉塞で直立する?

(d)は正しいです。

発達中の温帯低気圧では、地上低気圧の中心と上層トラフを結ぶ軸が、上層ほど西に傾いています。

この配置では、上層のトラフが地上低気圧の西側にあり、上空の発散などによって低気圧が発達しやすくなります。

発達期

上層トラフが地上低気圧の西側

軸は上層ほど西に傾く

低気圧が発達しやすい

一方、閉塞過程に入ると、地上低気圧と上層トラフの位置関係が近づき、軸は次第に直立していきます。

閉塞過程

地上低気圧と上層トラフが近づく

軸が直立

発達のピークを過ぎる

重要ポイント

北半球の温帯低気圧では、発達期の軸は上層ほど西に傾くと覚えます。

閉塞が進むと、軸は次第に直立します。

したがって、(d)は正しいです。

■ 補足講義:なぜ軸が西に傾くと発達するのか

温帯低気圧が発達するには、地上付近で空気が集まり、上空で空気が逃げる必要があります。

上層トラフが地上低気圧の西側にあると、地上低気圧の上空付近で発散が起こりやすくなります。

上空で発散

地上付近の空気がさらに集まる

地上低気圧が深まる

発達

閉塞過程に入ると、上層と下層の低気圧が重なり、軸が直立していきます。 この段階では発達のピークに近づいています。

■ 選択肢確認表

選択肢 判定 理由
(a) 台風から変わった温帯低気圧でも、温帯低気圧化後に中心気圧がさらに低くなることがあるため。
(b) 発達中の低気圧では、東側で暖気が北上し、西側で寒気が南下するため、熱は北向きに輸送されるため。
(c) 発達期には、低気圧中心の東側の雲域の北縁が寒気側にふくらむことがあるため。
(d) 発達期には軸が上層ほど西に傾き、閉塞過程では次第に直立するため。

以上より、(a)のみ誤りです。

したがって、正解はです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 温帯低気圧化=弱体化と決めつける

台風から温帯低気圧に変わっても、中心気圧がさらに低下して再発達することがあります。 「性質が変わる」と「必ず弱まる」は別です。

2. 熱輸送の向きを迷う

低気圧の東側で暖気が北上するため、熱は北向きに輸送されます。 「暖気がどちらへ動くか」を見れば判断できます。

3. バルジの意味がわからない

バルジは、温帯低気圧の発達期に見られる雲域のふくらみです。 赤外画像では雲域の北縁が寒気側へふくらむように見えます。

4. 上層トラフと地上低気圧の位置関係を覚えにくい

発達期は、上層トラフが地上低気圧の西側にあります。 そのため、地上低気圧と上層トラフを結ぶ軸は上層ほど西に傾きます。

5. 閉塞過程のイメージがない

閉塞が進むと、上層と下層の低気圧の位置が近づき、軸は次第に直立します。 発達期から成熟・閉塞へ進む流れで理解しましょう。

6. 「西に傾く」を南半球と混同する

この問題は北半球の偏西風帯です。 北半球の発達中の温帯低気圧では、上層ほど西に傾くと整理します。

■ まとめ

  • 台風から変わった温帯低気圧でも、再発達して中心気圧が低くなることがある。
  • 発達中の温帯低気圧では、東側で暖気が北上し、西側で寒気が南下する。
  • そのため、熱は北向きに輸送される。
  • 赤外画像では、発達期に雲域の北縁が寒気側へふくらむことがある。
  • 発達期には、地上低気圧と上層トラフを結ぶ軸は上層ほど西に傾く。
  • 閉塞過程に入ると、軸は次第に直立する。

正解は①

この問題で必ず押さえたいこと

温帯低気圧化

必ず弱まるわけではない

再発達することがある

低気圧の東側

暖気北上

熱は北向きに輸送

発達期

上層ほど西に傾く

閉塞過程

軸が直立

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第54回 専門知識 問10の解説でした!

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